【イベントレポート】ヘルスケア×ITで事業・プロダクト開発を推進する企業の最前線

先日ヘルスケア ×IT で事業・プロダクト開発を推進する企業の最前線に参加させて頂きました。

ヘルスケア事業には関心があったため、大変興味深く内容もとても充実していたので、各 LT の内容を簡単にまとめます。 当日とっていたメモをベースに書いているので、内容を完全に網羅しているわけではありません。

イベント情報

  • ヘルスケア・医療 IT 業界で働くことの魅力
  • 医療サービス開発における他職種連携
  • ヘルステックで新規事業を作るということ
  • ソフトウェアエンジニアが医療業界で働くということ
  • パネルディスカッション

ヘルスケア・医療 IT 業界で働くことの魅力

  • 登壇者: 高木さん/株式会社メドレー
  • メドレーはビジョンである「納得できる医療」の実現のため、人材 / 医療プラットフォーム を開発している
  • ヘルスケア x IT の魅力
    • ステークホルダーが多く課題も複雑(医師会、医療メーカー、医療従事者)
    • 電子カルテなど科学的根拠をベースにしている
    • 最新のテクノロジーの導入が早い(機械学習、AI 画像診断)
    • 医療は誰にとっても身近なので、課題意識を持ちやすい
    • 人力オペレーションがまだまだあり、エンジニアが活躍できる

感想: 医療業界は DX がなかなか進んでいない印象があったので、「最新のテクノロジーの導入が早い」という話は意外でした。医療業界は他の業界に比べると、テクノロジーが導入されるのは早い一方で、変化していくスピードが遅いのかなと思いました。

いずれにせよ、DX を進めていく余地はまだまだあり、エンジニアが活躍しやすいフィールドだということが分かりました。

医療サービス開発における他職種連携

  • 登壇者: 鈴木さん/株式会社 JMDC
  • 医療職がサービス開発に必要な理由
    • 医療従事者でないと課題を具体的にイメージしにくい
    • 医療の正しい専門的知識が必要
    • 医師の考え方・医療従事者の慣習・価値観を知っている必要もある
      • 医師は患者の健康が関わるので、リスク感度がとても高い
      • 営利企業に対しての警戒心が強い
  • 社外ではなく、社内専門家である理由
    • 課題が明確ではない状況で、課題を整理できる
    • 企業の立場や状況を理解して行動できる
  • 医療職が社内にいることで、「的を射た」サービス設計ができる

感想: 「医師は患者の健康が関わるので、リスク感度がとても高い/営利企業に対しての警戒心が強い」という話が、とても興味深かったです。医療業界の DX が進みづらい一因であり、ヘルステック各社が超えていかなくてはいけない壁だと感じました。 やはり、そのためには現役・元医療職の方が内部にいて、医療職特有の慣習や考え方を理解しながらサービス設計・開発をしていく必要があるのだと思いました。

ヘルステックで新規事業を作るということ

  • 登壇者:後藤さん/メドピア株式会社
  • ドクター同士のコミュニティサービス(MedPeer)が基幹事業
    • 12 万人が登録
    • 薬剤の口コミ、症例などをオンラインで解決
  • kakari
    • リリース 1 年半ほどで 1300 の薬局に導入/10 万を超えるアプリダウンロード数
  • kakari のメリット
    • 診断書を事前送信できるので、待たなくて良くなる
    • 服薬指導をオンラインでできる
    • チャット機能で薬の相談などもできる
  • 一見不合理に思えるサービス設計
    • 検索機能がない
      • かかりつけの薬局にしてもらうため、あえて他の薬局を探せない設計にしている
    • 処方箋も送信機能
      • 門前の病院から薬局へ行く人がほとんどなので、処方箋を事前送信できても意味が内容に思える
      • かかりつけの薬局として、他の病院で受診した際も繰り返し通ってもらうことを想定しているため必要だった。
    • 「kakari が入っている薬局は安心だから、選ばれる」という世界観の実現のため合理的な設計だった。

感想: メドピアの新規サービスである kakari を全面に押し出していく熱い LT でした。薬局の方々にも最初は理解されなかったサービス設計を崩さず貫いていて、ちゃんと設計が理になっていることは数字に現れているなと思いました。 ここまで理想を追求できているのは、基幹事業の収益基盤によってチャレンジしやすい環境になっているのかなと想像していました。

チャット機能で薬の相談をできるとのことでしたが、患者としては「薬の相談は医師にしたいのでは?」という点が気になっていましたが、こちらの記事ではチャット機能もかなり活用されているとのことでした。

ソフトウェアエンジニアが医療業界で働くということ

  • 登壇者: 磯貝さん/Ubie 株式会社
  • ソフトウェアエンジニアとしてヘルステック企業で働き始めて色々なつまづきがあった
  • データ量は多いが DB アンチパターン大盛りで、中身もかなり複雑
    • 開発チームの努力で多くは解決してきた
  • そのまま使えるエンジニアスキル
    • ヒアリング
    • チーム開発/スクラム
  • 医療業界で働く楽しさ
    • 社会的な意義を感じられる
    • 課題が多く、多様である
    • 医療従事者の人には、熱い人が多い
      • ヒアリングに真摯に答えてくれて、自分ごと化してくれる

感想: 他の登壇者の方もおっしゃっていましたが、ヘルステック企業で働くにあたって医療の知識やバックグラウンドは必ずしも必要ない、ということが分かりました。ここは誤解されやすいはずなので、こういったイベントで今後も情報を発信していってほしいです。

「社会的な意義があり複雑な課題解決を必要とされる」というお話はメドレーの高木さんとも共通していて、やはり面白そうなフィールドだと思いました。

全体的な感想

ヘルステック企業で働いている方の生の声を聞けて、非常に有意義な時間でした。 情報量もかなり多かったため、まとめきれていない部分も多いですが、個人的には以下の点が新しい発見でした。

  • ステークホルダーが多い業界で、複雑な課題解決を必要とされる
  • 課題意識を持ちやすい領域(課題意識を持って働いている人も多い)
  • 医療に関する知識、バックグラウンドは無くても問題ない

今回登壇された各企業は競合の関係ではあるものの、「みんなで医療を良くしていこう」というような温度感を感じられて、それもまた他の業界では見られない良さかなと思いました。